2006-01-10
Metal Gear Acid 2 には,付属の立体視ゴーグルを利用した立体映像シアター(「とびだシアター」)がオマケとして付いている。シアターのアンロックはカードの入手状況に対応しており,カードを集めれば集めるほど新たなシアターを見ることができるようになっている。
20 時間ほどプレイしたところ,約 65% のシアターをアンロックすることができた。これ以上揃えるのはかなり難しい作業になりそうな気がする。
MGA2 の立体視は,2分割された画面をゴーグルによって平行視するという,非常に簡単な仕組みによって実現されている。ゴーグル以外の特殊な機器は必要とされず,また,ゴーグル自体も厚紙によって作られているため,全体として非常にローコストにまとめられている。

立体感は,かなり浅めではあるものの,確かに感じられる。特に,ユーザーインターフェース(2D表示物)が手前に浮き出しているのが面白い。立体感が浅いのは,画角の狭さから生じる視差の制限のためであると思われる。
MGA2 における立体視は,ハードウェアの特性を活かしつつローコストにユニークなフィーチャーを実現した例としてみることができる。ただし,そのフィーチャーを十分に活かすことができていないという感は否めない。インターミッション等は立体視に対応していないため,ゲームを進めるうえではゴーグルの着脱を頻繁に要求される。また,立体視時は画面の横解像度が著しく低下するため,文字やユーザーインタフェースの類が非常に読みづらくなる。結局のところ,あくまでシアターのためのフィーチャーであると捉えるのが適切なのかもしれない。
2006-01-11
視差を利用した立体視は,イギリスの発明家チャールズ・ホイートストン [Wikipedia] によって 19 世紀半ばに発明されたものとされている。立体視には,視差を与えられた2枚の写真と,平行視のためのゴーグル「ステレオスコープ」が用いられた。
このステレオスコープは,スコットランドの科学者デビッド・ブリュースター [Wikipedia] によってレンズを用いた改良が施される。後に大衆化され,ヴィクトリア朝時代のイギリスにおいて大いに人気を博することになる。ちなみに,デビッド・ブリュースターは万華鏡の発明者としても知られる。
当時のアメリカの知識人として有名なオリヴァー・ウェンデル・ホームズは,このステレオスコープをアメリカ大陸へと持ち込んだ [NCSSM] 。こちらでも大衆化され,やはり人気を博したとされている。
第二次世界大戦の頃には,偵察のための航空写真に立体視が用いられるようになった [Paul Ross] [CIA] 。撮影には専ら特殊な軽量化を施した戦闘機が用いられた。カメラは機体に据え付ける際に僅かな傾きが与えられており,往路と復路とで撮影した写真を組み合わせることにより視差を生み出すことができた。これらの基本的なコンセプトは現在の航空測量でも変わらず用いられている。
2006-01-12
MGA2 で立体視を体験していると,視点の近くに物体が現れた際に焦点が定まらなくなることに気付く。これは,水平方向の画角 (FOV) が狭いことによって生じる問題であると思われる。
立体視においては,視点に近い物体ほど大きな視差を生み出す。大きな視差をカバーするには,十分に広い画角が必要とされる [VResources] 。ゆえに,視点から遠い物体を表現するには小さな画角でも十分だが,視点に近い物体に対して正しく立体感を与えるには,表示装置側で相当に広い画角がカバーできるようになっていなければならない。
画角の問題は VR (仮想現実)用の HMD (ヘッドマウントディスプレイ)においても重要な要素となる。一般に家庭向けの HMD 製品は平面映像の鑑賞が目的であるため,その画角は比較的狭い範囲に制限されているが,フライトシミュレータや軍事シミュレータで使用されるような VR 専用の HMD 製品では,十分に広い画角をカバーできるようになっている [VResources] [Stereo3D] 。例えば Rockwell Collins 社の Kaiser SIM EYE シリーズなどは,水平方向に約 100 度もの画角が与えられている [RockwellCollins] 。
過去に姿勢トラッキング機能を搭載したゲーム機向け HMD 製品が存在したものの,水平画角が非常に狭かった(約 25 度)ため,臨場感が表現できないという欠点があった [PUD-J5A] 。これを立体視に利用した場合は,臨場感だけでなく近景の立体感に関しても大きな問題を生じていたのではないかと思う。
2006-01-13
Steve Edwards - Micro Management
ミニマルテクノ(マイクロハウス)によってまとめられた約 65 分間のミックス。導入から誤魔化しようのないテクノの連続に,耐性無くば眩暈を覚えかねない。しかし最初と最後の1曲を除けば他はノリの良い選曲で,非常に「聴ける」構成となっている。暗めのテクノをどっぷりと聴き込みたい場合の手軽な特効薬,ないしは垢抜けた歌謡曲の食い過ぎで胸焼けを起こした際の処方箋として最適。
2006-01-14
ソウル系ハウスでまとめられた 80 分間のミックス。 "Golden" のジャズ的ミックスによる約4分間の淑やかな導入のあとは, "The Rain" のクラブミックスで一気に場を暖め,その後は息つく隙も無く軽快なソウル/ハウスミュージックが連続する。この導入部の接続は見事。比較的長いミックスだが中断せずに聴き切りたい。
2006-01-15
画像に立体感を与えるためのユニークな手法として, wiggle stereoscopy (ぐらぐら立体視)と呼ばれる手法が存在する [Wikipedia] 。この手法は Jim Gasperini によって紹介されて以来,立体視を極めて手軽に実現する手法として広く知られるようになっている [JimGasperini] [BoingBoing] 。
Wiggle stereoscopy によって表現される立体感には,いまいち掴みかねる部分があると感じられる。不思議なほど立体感のある画像もあれば [JimGasperini] [JimGasperini], あまり上手くいかない例もある [JimGasperini] 。概して視差の大きい画像では失敗する傾向があるように思われる。また,注視点の置き方にもコツがあるように思われる。
他の wiggle stereoscopy の応用例として, Wiggle Stereoscopic Viewer アプレット [SourceForge] に対応した写真を flickr からいくつか見つけることができる [flickr] 。これらを見比べることによって性質と傾向を分析してみるのも面白い。
Wiggle Stereoscopic Viewer アプレットには,2つの画像を滑らかにフェードする機能が用意されているが,これは敢えて切った方がうまく立体感が表現されるように感じられる。これは, wiggle stereoscopy の原理として眼の残像による効果を狙った部分が存在するためではないかと思われる。
2006-01-16
Marketplace によれば,フランスでセール(バーゲンセール)の時期が始まっている [Marketplace] 。フランスではセールは「ソルド」 (solde) と呼ばれ,年に2回の決まった期間に行うことが法律によって定められている [AllAbout] 。このような規制があるため,この時期には街中の商店が一斉にもれなくセールを行うことになる。
このような規制が存在する理由のひとつとして,小規模商店の保護が挙げられる。フランスを始めとする欧州諸国には小規模商店を保護するという文化が存在する [study-MIRAI] 。他にも大規模小売店舗の立地規制やダンピング規制,果ては「閉店法」のようなユニークなものまで含め様々な法令が存在しており,日本やアメリカなどとは少し勝手の異なる世界であることが想像される。
日本やアメリカでは年がら年中諸所で「セール」を見つけることができる。それどころか,無限に「閉店セール」を繰り返す不思議な商店まで存在する [NIKKET NET] 。 The Old New Thing によれば, New York Times 誌は宣伝スペースに「閉店」 (Going Out of Business) と記す際には当局による証明を示すことを義務付けている [NYTimes] 。
(via The Old New Thing)
2006-01-17
CG のサンプル素材としてティーポットのモデルが使われている場面をよく目にすることがある。

Image rendered by Henrik Wann Jensen (2002)
このティーポットはユタ大学発祥であることから "Utah teapot" と呼ばれている。 Utah teapot の歴史については [SteveBaker] に詳しい。
[Wikipedia] によれば, Utah teapot の歴史は 1975 年まで遡るとされている。モデリングを行ったのは陰面消去アルゴリズムの考案などで知られる Martin Newell であり,そのモデルとなったティーポットは Newell 夫妻の所有物であるとされる。後にこのティーポットは Boston Computer Museum に寄贈され,現在は同館の所蔵品となっている [ComputerHistory] 。

Image from Computer History Museum
Martin 氏は Sandra 夫人の勧めで手元にあったティーポットのモデリングに着手したとされている。モデリングは主に方眼紙と鉛筆によって行われ,ベジェ曲面への変換は研究室に戻ってから行われた。また,このときモデリングされたデータの中にはティーポットだけでなくティーカップやティースプーンまでもが含まれていた。今ではもっぱらティーポットのみが素材として用いられているが,オリジナルデータの中にはそれらの小物を見つけることができる [JingLi] 。

ちなみに,オリジナルの Utah teapot は底が抜けている(底面のポリゴンが存在しない)ことが知られているが,ティーカップもやはり底が抜けている。
モデルとなったティーポットと Utah teapot を比較してみると,全体としてのプロポーションが異なっている(縦に潰れている)ことに気付く。これは,このデータの初期のユーザの一人である Jim Blinn が Evans and Sutherland 社のフレームバッファを利用していたことに由来する。同社のフレームバッファはピクセルが正方形でなく縦長であったため,氏はこれを補正するためにティーポットのモデルを 1/1.3 倍に潰して利用していた。ところが,氏の配布したデータはオリジナルよりも広まってしまったため,むしろ「潰れた方のティーポット」が標準になってしまったとされている。
最近では,ティーポットよりも形状の複雑な Stanford Bunny や Happy Buddha [Stanford] などを目にする機会が多くなっている。しかし今もなお,シンプルな形状のサンプル素材として Utah teapot は根強い人気を誇っている。また,同モデルには CG 界における象徴的な意味合いもある。 [Wikipedia] によれば, "Toy Story" や "Monsters Inc." 等の映画の中に Utah teapot の姿を見つけることができる。今後も,このティーポットに対する敬意の一端を,そのような形で目にする機会があるのではないかと思う。
2006-01-18

Image from Stanford 3D Scanning Repository
Stanford Bunny は 69,451 トライアングルから構成される [Stanford] 。リアルタイム CG のサンプル素材としては適度な密度であると思われる。これが例えば "Happy Buddha" や "Dragon" になると約 100 万トライアングルにまで跳ね上がる。 "Lucy" は 2,800 万トライアングルもある。これをリアルタイムに扱うのは流石に厳しい。
Happy Buddha や Lucy の軽量化されたモデルは INRIA GAMMA Project から入手することができる [GAMMA1] [GAMMA2] 。こちらのモデルならばリアルタイムで扱うこともさほど難しくないのではないかと思われる。
Happy Buddha の由来は定かではないが,風体から布袋尊がモデルであると思われる [Wang] 。
Lucy の方は,スタンフォード大が中心となって進められたプロジェクト「デジタル・ミケランジェロ」 [Michelangelo1] の機材テストとしてスキャンされたデータが元となっている [Michelangelo2] 。モデルとして使用されたのは,イタリア製の "Angel of Light" という名のレジンキャスト像 [Statues] であるとされる。
Stanford Bunny の由来については [Turk] に詳しい。解説によれば, Greg Turk および Marc Levoy が 1994 年当時に開発していた 3D レンジスキャナーのテスト素材として用いられたのが,このウサギであるとされている。モデルとなったのは,当時大学通りの小物屋で売られていたウサギの陶器の置物であり,その置物は現在もスタンフォード大に残されている。
[Stanford] によれば, Happy Buddha や Lucy は特定の地域において宗教的・文化的な意味を持つモデルであるため,これらのモデルを変形したり破壊したりするのは避けるべきであると警告されている。変形や破壊の用途には Stanford Bunny を用いることが推奨される。少し可哀そうかもしれないが,このウサギであれば何をしても怒られることはない。気兼ねなく,破壊したり,切り裂いたり,太らせてみたり,激痩せさせてみたり,毛を生やしてみたり,好き勝手することができる。例えば Turk 氏自身による「溶けるウサギ」の例などは微妙な味わいがあって面白い [Carlson] 。

Image from "Melting and Flowing" Carlson et al.
2006-01-19
世界最大規模の国際楽器展示会である NAMM Show が現地時間の 1/19 より開催される。ショーに合わせて各社が新製品の発表を始めているが,中でも Roland と KORG の新製品が面白い。
Roland の新製品 "JUNO-G" は,往年の名機 JUNO-106 / JUNO-60 を彷彿とさせる。

Image from Roland Press Resources

Image from Vintage Synth Explorer
"SH-201" も面白い。JUNO-G が多機能で攻めてきているのに対して, SH-201 は非常に簡素な設計にまとめられており, VA (virtual analog) シンセとしての位置付けが明確になっている。どちらかと言えば,こちらの方がビンテージファンに受ける要素を持っていると言えるかもしれない。
2006-01-20
フリーで使用することのできる省サイズビットマップフォントについて調べてみると,結構なバリエーションが存在することが分かる。このうち,日本語ビットマップフォントについては狩野氏のページに詳しくまとめられており,非常に参考になる。
とにかく小ささを追求する場合は「美咲フォント」が候補に挙がる。 8x8 ドット(実質的には 7x7 ドット)で JIS 第一・第二水準をサポートしている。英数字および第一水準(約 3,900 字)をバイナリ化すると,約 30KB に全てが収まる計算となる。
この小ささはメモリに制約がある場合などに非常に有難く感じられる。しかし,さすがに 8 ドットフォントは少し読みづらい。漢字の出現頻度の高い文章などを読む際には,ちょっとした想像力が必要とされる。

魁 悔 械 海 / 柿 蛎 鈎 劃
これが 10 ドットフォントになれば,かなり良好な視認性を確保することができる。こちらは「ナガ10」や "M+ gothic" などが完成度が高く使いやすい。

ナガ10
これらのフォントの多くは BDF 形式で配布されている。 BDF 形式はテキストベースのシンプルなフォーマットであるため,パーサーを自作することも難しくない。ただし,単純に画像化することが目的であれば, bdf2bmp 等のツールを用いるのが便利であると思われる。
2006-01-21
海外メディアにおけるライブドア関連ニュースの取り上げられ方を調べてみると,やはりそれなりに話題になっていることが分かる。 GoogleNews 上での検索結果 [GoogleNews] から辿る限りでは,事件自体の動向を追う記事よりも,日本経済全体の動向を追ううえでライブドアの話題に触れているケースが多いように見受けられる。ただし,株式市場に対する影響は落ち着きつつあるので,今後取り上げられる機会は自然と少なくなるのではないかと思う。
TIME 誌の記事 [TIME] のように,この騒動を新旧世代間の争いであるとして読み取る向きは少なくない。ただし,この記事のようにあまりにも紋切り型な見方には違和感を覚える。
東証において過負荷から取引が一時停止された件に関しては,先日 NASDAQ でもシステム障害 [ITMedia] が発生したことから,去年末に発生したシステム障害と併せて,話題として認識されている [CBCnews] 。
最後に ABC News で見つけた少し面白い表現。
"Japanese consumers seemed so traumatized by their country's fall from the heights of the 1980s (remember when Japan Inc. ruled the world?) that when their own property bubble collapsed, they simply stopped spending. Throughout the 1990s, the world's biggest savers kept $10 trillion stuffed under their futons." - ABC News
「タンス預金」ならぬ「フトン預金」。単純に「金庫の中に」としたのではつまらないからフトンにしたのだろうが……少し認識に違いがあるような気もする [Excite] 。
2006-01-22

Photo by Randy Montoya
米軍が開発を行っている兵器の中には,SFも顔負けするような未来的なものが存在する。その多くは目下研究段階にあり,将来的に実用化に繋がるかどうか疑わしいものも少なくない。しかしその中でも, Active Denial System (ADS) は最も実用化に近い段階にまで達しているものひとつであるとされる。 Inside the Army の報告によれば,イラクへの配備が既に検討されているとの情報が存在する [Military.com] [DefenceTech] 。
ADS は非致死性兵器 (non-lethal weapon) の一種であり,電磁波のビームを照射することによって対象に痛みを感じさせることができる。 ADS の概要については [Hotwired] 等が参考になる。
ADS の動作原理は電子レンジに似ている。電磁波の照射によって人体内の水分子を振動させ,その温度を2秒間に摂氏約50度まで上昇させる [GlobalSecurity] 。これは高温で熱された物体を肌に押し付けられたときに似た痛みとして感じられる。この痛みは非常に耐えがたいものであり,ビームの照射範囲から離れるまで続く。長時間の照射を受けると皮膚に火傷を負う危険性があるが,これには約 250 秒かかるとされている。そのため,大抵の人は火傷を負う前にビームから逃れることができる。このような特性は非致死性兵器としては望ましいものであると考えられる。
電子レンジでは主に 2.4 GHz のマイクロ波が用いられているが, ADS では 95 GHz のミリ波が用いられる。また,現段階での射程距離は 700 ヤード (640m) ほどであるとされる。これは狙撃用のライフル銃が 1km 以上の射程を持つことと比較するとやや短めではあるが,絶対的な直進性や速度といった要素がこれを補って余るものであると考えられる。
ADS は,暴徒などを傷つけることなく追い払うための手段として非常に効果的な兵器になりうると考えられている。例えば去年の9月,炎上したブラッドレー戦闘車輌に群がった群衆を追い払うためにヘリコプターが発砲し,少なくとも13人の民間人が死亡するという事件があった [WashingtonPost] 。今のところ,このような状況において兵士が用いることのできる道具は,拡声器か銃火器のどちらかしか用意されていない。一方は何ら効果が無く,もう一方は死が伴う。ヘリコプターに装備されるような機関砲(ミニガン [Wikiepdia])にもなれば,なおさら手加減などは望めない。
現段階で実用化されている非致死性兵器としては,テーザー銃 [Taser] やゴム弾 [Wikipedia] が挙げられるが,いずれも一人しか狙うことができないため,脅しの効かない暴徒に対しては効果が望めない。ゴム弾式クレイモア(指向性地雷) [GlobalSecurity] は群集制御に特化された兵器だが,前もって設置を行う必要があるため前述のような状況には適さない。スタン・グレネード [GlobalSecurity] は閃光と轟音によって対象を無力化させる兵器だが,これも群集に対しては限られた効果しかないことが実証されている [DefenseTech] 。催涙弾は群集制御の古典的な手段だが,このような化学ガス兵器を市街で用いるには慎重な判断が要されるうえ,その効果は天候に大きく左右されてしまう [DefenseTech] 。
このような状況において ADS は非常に有望な兵器であるが,その ADS 自体も安全性については未だ問題が残されている。ボランティアを利用した試験においては,眼球への損傷を避けるために,眼鏡やコンタクトレンズを前もって外したうえで行われた [NewScientist] 。2回目の試験ではコインや鍵のような金属物も外されたうえ,チャックやボタンのような衣服の金属部分についても確認が行われた。実地においてはこのような配慮が行われるはずも無く,場合によっては恒久的な損傷が残ることも予想される。
また,対象が群集の場合,密集と混乱から一部にはビームから逃れられない人も出ることが予想される。そのような人には火傷を負わせてしまう可能性がある。また,火傷を始めとする外傷とは別の問題として,電磁波の照射が人体に与える影響 [EMF] についても安全性を確認する必要がある。
様々な問題が残されているものの, ADS は現在米軍が直面している状況において必要とされる兵器であることは間違い無い。最終的な安全性の確立と,いくつかの技術的な問題をクリアすることができれば,間も無く実戦配備されることが予想される。そのときには,ニュースや映画の一場面において ADS が活躍する様を観ることができるかもしれない。
2006-01-23

Photo from Northrop Grumman Press Kit
未来的兵器のイメージとして挙げられるものの中に,レーザー兵器が存在する。レーザーを兵器に用いるというアイデア自体は比較的古くから存在するものの,その試みは未だ実用化にまで辿り着くことができていない。例えば,アメリカとイスラエルが共同で開発を進めている戦術高エネルギーレーザー計画 (Tactical High Energy Laser; THEL) [Northrop] [Wikipedia] は,飛翔中のカチューシャ・ミサイルや迫撃砲弾を撃ち落したり,複数の砲弾を同時に撃ち落すなどの印象的な結果を残しているにも係わらず,実戦への投入は未だ程遠い段階であるとされる [DefenseNews] 。
レーザー兵器が実用化されない理由としては,まず機器の小型化が困難であることが挙げられる。レーザー兵器は射程が限られるため,広範囲の防衛に用いるには高い機動性が求められる [DefenseUpdate] 。 THEL は当初固定式で開発が行われていたが,途中から移動可能バージョン (MTHEL) への移行を余儀なくされた。しかし小型化への道程は予想以上に厳しく,未だ「再配置可能」 ("relocatable") バージョンでさえ完成させることができていない。
次に,エネルギー源(燃料)の扱いにくさが挙げられる。軍事用途に用いられる高出力の化学レーザーは,動作原理として化学物質の反応を利用しているため,運用には大量の化学物質が必要とされる。例えば米空軍が開発を進めている航空機レーザー (Airborne Laser) [Boeing] では化学式酸素ヨウ素レーザー (Chemical Oxygen Iodine Laser; COIL) を利用しているが,これには大量の過酸化水素と,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウムが必要とされる [Edwards] 。これらの物質は工業的に見てさほど特殊な物質ではないが,いずれも人体にとって有害ではある。このような物質を大量に生成し,運搬・保管・破棄を行うとなると,新たに発生するコストは非常に大きなものになると予想される。
化学レーザーには以上のような問題が伴うことから,最近では固体レーザーへの転換が計られている [Northrop] 。この計画が成功を収めるには,固体レーザーにおいて化学レーザー並の高出力が実現されることが必須条件となるが,その点に関して具体的な解決策が導き出されているかどうかは定かでない。
2006-01-24
「レーザーが発明された 1960 年当時,これは『使うあての無い解決手段』 ("a solution looking for a problem") であると言われていた。しかしそれ以後,レーザーは現代社会のあらゆる分野において,幾千にも及ぶ多彩な用途を見つけ,遂には偏在的なものとなった。その分野は家電,情報技術,化学,薬学,産業,防犯,軍事,等々に及ぶ。レーザーは 20 世紀における最も影響の大きな技術的偉業のひとつであると広く認知されるに至っている。」 - Wikipedia
2004 年には,半導体レーザーだけで約 7 億 3 千万個ものデバイスが販売された。金額ベースでは 32 億ドルに達する [LaserFocus1] 。半導体以外の方式のレーザーについては 13 万台と比較的少なめだが,金額ベースでは 22 億ドルに達する [LaserFocus2] 。
2006-01-25

Photo credit: ESA
今月の 11 日,欧州宇宙機関 (European Space Agency; ESA) は,オーストラリア国立大学と共同で開発していた新型イオンエンジン "DS4G" の試験運転が成功したことを伝えた [ESA1] 。このイオンエンジンは,従来型と比較して約4倍もの推進効率(比推力)を実現しており,今後の宇宙開発に大きな進歩をもたらすことが期待されている。
さらに驚くべきことに,このイオンエンジンは約4ヶ月という非常に短い期間でプロトタイプを終えている。従来型の4倍もの性能を誇るエンジンが,なぜそのような短期間に完成したのだろうか? DS4G の設計者であり,開発チームのリーダーも務めたオーソン・サザーランド博士は,次のように語っている。
「DS4G のプロトタイプの成功は,能力と参加意識を持ったチームが情熱を持って邁進したとき,何が達成されるのかを教えてくれます。 ESA と共に働き,このようなエレガントなアイデアを記録破りの実物へと変えたことは,信じられないほど素晴らしい経験でした。」
イオンエンジンは,イオン化された推進剤(この場合はキセノンプラズマ)をグリッド状の電極によって加速し,これを高速に放出することによって推進力を得る [JAXA] [Wikipedia] 。このとき,電極間の電位差を高めれば高めるほど推進剤の速度も高まるが,この電位差が 5,000 ボルト付近に近づくと,推進剤がグリッドに衝突する割合が高くなってしまい,エンジンの寿命が縮まるという問題を抱えていた。
DS4G では,このグリッドを4枚に増やし,適切な配置と電位差を求めることによって,問題の解決に成功した。この改良により電極間の電位差は 30,000 ボルトまで高まり,放出される推進剤の速度は秒間 210 キロメートルに達するようになった。結果として得られる非推力は 19,200 秒とされる [ESA2] [ESA3] 。これは,例えば小惑星探査機「はやぶさ」に用いられているイオンエンジンの比推力が 3,400 秒であることと比較すると,非常に大きな値であることが分かる [NTSpace] 。従来なら月探査に用いた量の推進剤で太陽系を脱出することが可能であるとまで言われている。
[via DocBug]
2006-01-26

Image from UAV website
UnitedVisualArtists, Colder - "To The Music" (video)
UAV (UnitedVisualArtists) による Colder のプロモビデオ "To The Music" は,デジタルエラーが生み出す美しさを追求している。Bumblebee と呼ばれる安価なステレオカメラによってスキャンされた3D情報には,非常に大きな歪みや欠落が含まれている。しかし,そのようにしてスキャンされた情報には,そのデバイスの持つ制限や特徴が投影されていると考えることができる。その情報から再構築された世界は,リアルな世界とは異なった視点を与えてくれる。それは時に対象の本質を表現する。
[via we make money not art]
2006-01-27
ローファイだが深みのある音作りに盆栽のイメージが重なる。テープエコーによって生み出される音のうねりに不思議な陶酔感を覚える。単純な繰り返しのフレーズも,音数の少ないシンプルなフレーズも,テープエコーのツマミ次第で存在感が幾重にも変化する。
フィードバックを高くしたテープエコーに音を一瞬入れ込むと,その音はフィードバックを重ねるうちにうねりを得ながら,空間の中へと広がっていく。ちょうどそれは,澄み渡った水面に墨を流し,その墨が水面を広がり染み込んでいく様を見るのに似ている。
2006-01-28

Photo from 22C3 Public Wiki
RFID タグの応用には必ずプライバシーの問題 [NikkeiBP] がつきまとう。これを解決するための技術的アプローチは様々に考えられるものの,最も基本的な所では,消費者の側でこれを任意に無効化する手段が存在することが重要と思われる。
商品のパッケージ等に貼り付けられた RFID タグであれば,消費者側でこれを容易に取り外すことができる。しかし,商品自体に埋め込まれた RFID タグの場合は,取り外すことが非常に困難な場合もある。 RFID タグは過負荷による破壊が可能なことから,電子レンジを使って無効化することも可能とされる [RSA] 。しかし,例えば衣服に縫い付けられた RFID タグなどについては,加熱による損傷や発火の恐れがあるため,あまり勧められない。
昨年12月にドイツで開催された第22回カオス・コミュニケーション会議 (Chaos Communication Congress) より MiniMe および Mahajivana の報告 [CCC] によれば,使い捨てカメラを改造した簡易的な装置 "RFID-Zapper" によって RFID タグの恒久的な無効化が可能とされる。
報告によれば, RFID-Zapper の製作は比較的容易とされる。要約すれば,フラッシュ付き使い捨てカメラからフラッシュ部品を取り外し,そこにエナメル線で作成したコイルを繋ぐだけで完成する。このコイルから生じる電磁界によって近傍の RFID タグ内に異常電圧が印加され,内部回路を構成する素子のうち何かが破壊されることを期待する。この装置の製作手順は CCC のワークショップ内で実際に披露され,その場で 13.56 MHz 型の RFID タグ(一般的な近傍型のタグ)を無効化することに成功している。
このような装置はプライバシー防衛の観点からある程度の需要は存在すると考えられるものの,万引き防止タグの無効化などに悪用される恐れがあるため,今後もあまり一般的な存在とはならないのではないかと思われる。
2006-01-29
Cristina Cifuentes. The Impact of Copyright on the Development of Cutting Edge Binary Reverse Engineering Technology. [CiteSeer]
特定のソフトウェアやハードウェアの機能を著作権によって保護することは難しい。リバースエンジニアリングは秘匿された情報にアクセスするために必然的に発生する工程であり,対象が正当に入手されたものであれば適切な行為であると考えられる。このことは IEEE によっても支持されている(文献8ページ)。リバースエンジニアリングの過程で発生するソフトウェアの複製についても,最終的な生産物の中にそれが残っていなければ,フェアユースとして認められる。
結局のところ,リバースエンジニアリングは一般に適法であり, DMCA 法が絡むような場合 [EFF] や資料の入手に不正があった場合 [DLO] 等を除けば,その行為自体を違法視することはできないと考えられる。リバースエンジニアリングとフェアユースの関係,および著作権の保護範囲との関係については [寺本] [藤本] [井上] 等が参考になる。
2006-01-30

Image from Adobe Lightroom Beta tutorial
Adobe Systems は今月の 9 日,画像処理ソフト "Lightroom" を公開した [ZDNet] 。現在既に Macintosh 向けのベータ版の配布が Adobe Labs において開始されている [Macromedia] 。
[Hamburg] によれば, Lightroom の実装にはスクリプト言語 Lua [Lua1] が用いられている。その割合は,全ソースコードのうち約 40% (約 10 万行に相当する)を占めるとされている。 Lua はこれまでゲームや小規模アプリの制御などに用いられることが多かったが [Lua2] , Lightroom のようなデスクトップアプリにおいて主要部分の実装に用いられるのは非常に珍しい例(あるいは初めての例)ではないかと思われる。
ちなみに,昨年の Lua Workshop 2005 [Lua3] は Adobe 社によってスポンサーされており,前出のプレゼン [Hamburg] を行った Mark Hamburg 氏はワークショップの主催者の一人でもある。
[Hamburg] によれば, Lightroom における Lua の使用は,当初は限定的なものであったとされる。そのうちに,複雑で拡張の難しい C++ を避け,徐々に Lua と Objective-C の組み合わせへと移行していく過程が語られている。
残念ながら,現在公開されている資料だけでは, Lua を選択した決定的な理由について十分に理解することができない。しかし今後この製品が完成へと近づくにあたって,種々のノウハウがコミュニティへと還元される機会が設けられるのではないかと期待される。
[via Bob Congdon]
2006-01-31
ある日のこと, Ned Batchelder 氏が, QA の募集に対して面接に来た女性に,なぜ QA の仕事が好きなのか尋ねてみたところ,彼女はこう答えた。
「不満を言うことでお金の貰える仕事なんて,他にあります?」
たとえ,品質に対してどんなに高いこだわりを持っていたとしても,開発者が目指す「品質」と,顧客ないしは会社が求める「品質」の間には,様々な意味での違いがある。彼女達の述べる「不満」は,その間にある違いを認識するために必要となる客観的な視点を提供してくれる。不満を述べることが好きならば大いに結構で,その不満を自己分析する能力と,その内容を的確に表現する能力さえあれば,素晴らしい QA 担当になることができる。彼女達が辛辣であればあるほど,品質を高める機会は増加する。
[via Ned Batchelder]